心療内科 レジデントマニュアル

心身医学・心療内科についての正しい理解を広めていきたいと思います。

黒人女性における人種差別を受けた経験と成人発症気管支喘息の発生率

人種差別を受けた黒人女性において成人発症喘息の罹患率の高さが認められた。

気管支喘息は代表的な心身症の一つであり、人種差別という慢性的かつ普遍的なストレスの影響を検討する事は、心身医学的にも公衆衛生学的にも意義のある事ではないだろうか。

 

 

Experiences of Racism and the Incidence of Adult-Onset Asthma in the Black Women’s Health Study.

Patricia F. Coogan, ScD; Jeffrey Yu, MPH; George T. O’Connor, MD, FCCP; Timothy A. Brown, PsyD; Yvette C. Cozier, ScD; Julie R. Paler, ScD; and Lynn Rosenberg, ScD

CHEST 2014; 145(3):480-485

 

背景

 人種差別の経験から生じる慢性的なストレスは、気道とその免疫システムに影響を与え、成人発症気管支喘息の発症率を上げる可能性がある。我々は1995年から2年毎に質問紙を郵送しているアメリカにおける黒人女性の前向き試験である、the Black Women’s Health Studyにおいて、人種差別の経験と喘息の発症率の関係について前向き解析を行った。

方法

 1997年から2011年までの38142人の参加者の内で、1068人の喘息発症の報告を得た。

 喘息発症の定義は、1997年から2011年の間に初めて喘息と診断され、少なくとも1週間に3日以上は吸入薬か内服薬を使用していることとした。

 日常的人種差別スコアは、日々の生活における人種差別を受ける頻度に関する5つの質問から作成され、1997年と2009年に行われた。日々の生活において人種差別を受ける頻度を測り、生涯に渡る人種差別スコアについては職場や家庭、警察からもたらされる差別に関する質問に基づいて作成された。解析には喘息発症における上記人種差別スコアの各項目に対するmultivariable incidence rate ratios(IRRs)95%信頼区間を求めるのにコックス多変量回帰モデルを使用した。

結果

 1997年の日常的人種差別スコアに関して上位1/4の参加者と下位1/4の参加者を比較すると、IRRs1.45(95%CI 1.19-1.78) (P for trend<0.0001)、生涯に渡る人種差別スコアが最大値の参加者と最小値の参加者を比較すると、IRRs1.44(95%CI 1.18-1.75)(P for trend=0.0004)であった。1997年と2009年に同じ程度の人種差別を報告した女性では、喘息発症のIRRsは、日常的人種差別スコアに関して上位1/4の参加者が2.12(95%CI 1.55-2.91)、生涯にわたる人種差別のスコアが最大値の参加者が1.66(95%CI 1.20-2.30)であり、この参加者群ではより強い相関を認めた。

結論

 人種差別は黒人女性において成人発症喘息と生の相関を認めた。アメリカ黒人女性は人種差別を経験する機会の多く、喘息の罹患率が高いことから、人種差別と喘息との関連は公衆衛生学的にも重要な意義がある。

  

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