心療内科 レジデントマニュアル

関西の有志の心療内科医によるブログです。心身医学・心療内科についての正しい理解を広めていきたいと思います。

喘息罹患児においてネガティブなライフイベントは喘息発作リスクを上昇させる

The role of acute and chronic stress in asthma attacks in children.

Sandberg S, Paton JY, Ahola S, McCann DC, McGuinness D, Hillary CR, Oja H.

Lancet. 2000 Sep 16;356(9234):982-7.

 

背景

強いレベルのストレスが遺伝的にリスクのある小児における喘息発症と罹患率増加に関連ことが示されてきた。本研究はストレスが実際に小児喘息患者で新たな発作を引き起こすかどうかを調べるために行った。

方法

喘息罹患児を18ヶ月間前向きにフォローアップを行った。日記と毎日のピークフロー値を用いた継続的モニタリングを行い、同時にライフイベントと長期の心理社会的体験に関して面接調査を繰り返し行った。評価項目は、喘息発作、重大なネガティブなライフイベント、慢性的なストレス要因とした。

結果

患児自身に関わるものと強い慢性ストレスに関わるもの両方を含む、重大なライフイベントは新たな喘息発作のリスクを有意に増加させた。慢性ストレスを伴わない重大なライフイベントの影響はやや遅れて起こっていた。ライフイベントが起こって2週間の間は影響がなかったが、続く4週間(2週間後~6週間後)に喘息発作のリスクの有意な上昇を認めていた(odds ratio 1.71 95%CI 1.04-2.82, p<0.05 for weeks 2-4, 2.17 1.32-3.57, p<0.01 for weeks 4-6)。重大なライフイベントが高い慢性ストレスを背景に起こった場合には、喘息発作のリスク上昇は早い段階で起こり、ほとんどが2週間以内に起こっていた(2.98 1.20-7.38, p<0.05)。喘息発作の頻度は複数の因子によって影響を受けており、そのいくつかは喘息に、そのいくつかは患児の特性に関連していた。女児、ベースラインの喘息重症度が高いこと、6ヶ月に3回以上の発作歴、秋から冬の季節、両親の喫煙は全て新たな気管支喘息発作のリスク上昇に関連していた。社会的階層と慢性ストレスはリスク上昇に関連していなかった。

解釈

重大なネガティブなライフイベントはその後に続く数週にわたって、患児の喘息発作のリスクを上昇させる。患児の生活状況が多要因の慢性ストレス要因にさらされている場合には、さらに喘息発作リスクは高まり、より早くに発作のリスク上昇が認められる。

 

 ストレスが喘息罹患児の発作に与える影響を前向きに調べた研究です。日常臨床で患者さんを診ていて、ストレスと喘息発作の関連を感じることは多いので納得です。