心療内科 レジデントマニュアル

心身医学・心療内科についての正しい理解を広めていきたいと思います。

世界的な物質利用障害の傾向とは?

 
 
Global research mapping of substance use disorder and treatment 1971–2017: implications for priority setting

Substance Abuse Treatment, Prevention, and Policy
First Online: 17 May 2019
 
Bach Xuan TranEmail authorMackenzie MoirCarl A. LatkinBrian J. HallCuong Tat NguyenGiang Hai HaNam Ba NguyenCyrus S. H. HoRoger C. M. Ho
 
肝の図表!
 

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年毎の論文の発表数

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アブストラクトのまとめ
 
【背景】
世界的に、物質使用障害は蔓延しており、ヘルスケアシステムにとって難解な公衆衛生問題であり続けている。本研究は、物質使用障害研究の世界的な展望を提供することを目的とする。

【方法】
Web of Scienceプラットフォームを使用して、物質使用障害と治療に関する科学論文の横断的分析を行った。記述統計の手法ととネットワークの視覚化グラフを使用して、出版量、影響、成長、著者、機関、国、およびジャーナルの特性を調べた。

【結果】
1971年から2017年の間に、違法薬物(5403)、タバコ(4469)、およびアルコール(2137)使用障害に関する13,686の論文が発表されました。マインドフルネスとデジタル医学のトピックに関する出版物の数は、他の方法よりも後で出てきたにもかかわらず、2003 - 2007年以来300%以上増加している。他の非製薬療法(行動療法、認知行動療法、スキルトレーニング、または動機付け面接)に関する論文の数は次第に増加したが、成長率は5年ごとに低下した。米国が世界の世界の物質使用障害研究のハブ的な役割を担っており、世界最大の出版数(8232または60.2%)および総引用数(252,935または65.2%)、多数の著者(上位30のうち25または83%)および機関 (上位26社のうち24社、92%)を有し、最も国際的な研究パートナーシップを形成していた(96の異なる国々と)。国際協力は地理的な近さと文化的な類似性によるところが大きかった。

【結論】
この研究は、物質使用障害の出版物の世界的な動向の包括的な展望を提示した。調査結果は、地域社会における物質使用障害に対処するために、文化的に異なる地域の文脈それぞれに合った介入の検討を支援する研究方針の必要性を示唆している。

感想)
傾向としては予想通り。ただやはりマインドフルネスの伸びが著しいのは特筆すべきところ。意外にも動機付け面接の熱は少し冷めかけているのかもしれない。

プライマリケアにおいて慢性疾患への対応に動機付け面接は有用!

JMIR Ment Health. 2019 Apr 29;6(4):e12540. doi: 10.2196/12540.

Applicability of Motivational Interviewing for Chronic Disease Management in Primary Care Following a Web-Based E-Learning Course: Cross-Sectional Study.
WebベースのEラーニングコースによる動機付け面接の継続学習はプライマリケアにおける慢性疾患管理への動機づけ面接の適用性:横断的研究
 
 
肝の表!
 

https://docs.google.com/drawings/d/e/2PACX-1vT0QEbHx3sf4ZPkto6PqPRcURIITqan5UD2Eze23mRzAQt9j4RFRg8R-sBnmD1Hb-quPcr7bC9b8k0K/pub?w=960&h=720

専門職>>>プライマリケア医>医学生の順に有用性が高い!

アブストラクトのまとめ

バックグラウンド:
動機付け面接は、健康行動を変えるための内発的な動機を高めるための確立されたコミュニケーション方法である。 Eラーニングは継続的な教育の提供にかかるコストと時間を削減することができ、個々の作業の取り決めや医療専門家の日常業務に容易に統合することができます。このように、Webベースのコースは、慢性疾患患者のためのMIテクニックに関して、様々なレベルの教育と専門知識を持つ医療専門家を慣らす手段として考案された。

目的:
本研究の目的は、教育のレベルによって層別化された、日常の実践におけるコースで学習したMIの実用性についての参加者の意見を聴取した。

方法:
MI Webベースのトレーニングコースの参加者(N = 607)は、自己管理型アンケートを使用して、18か月以上にわたってコースを評価した。評価は記述的に分析され、教育のレベル(医学生、専門家訓練の医師[PST]、および一般開業医[GP])について層別化された。

結果:
参加者は、コースによって得られたスキルと知識の適用性に関してよい評価を与えていた。(医学生:94%[79/84]good; PST:88.6%[109/123]excellent;およびGP:51.3%[182/355]excellent) )将来MIの使用を想定しているかどうかを尋ねられたとき、79%(67/84)の学生がある程度、PSTの88.6%(109/123)とGPの38.6%(137 / 355)が非常に関係があると報告した。参加者は、「薦める事」や(医学生:85%[72/84]; PST:90.2%[111/123];GP:37.2%[132/355])や「勇気付けること」(医学生:81%[68/84];PST:45.5%[56/123]; GP:36.3%[129/355])、行動の変化について話し合い、患者の選択に対する敬意を伝える事(医学生:72%[61/84]; PST:50.0%[61/123]; GP:23.4%[83/355])などのコミュニケーション能力の向上を認めた。

結論:
参加者はMIの実用性を確認した。
ただし、MIの実用性とその期待されるメリットは、個人の教育/専門知識のレベルに依存していた。
 
感想)
慢性疾患を持つ患者さんへのコミュニケーション技法としてのMIは非常に有用です。プライマリケア医・家庭医だけでなく慢性疾患の診療に関わる全ての医療者が知っておくべき技術です。しかし本邦ではまだ十分に認知されているとは言えず(医療を超えた領域では一部広がりを見せていますが)、更なる啓発が望まれます。

急性疼痛にトラマドールを使用すると・・・?

本日の論文はこちら
 
BMJ. 2019 May 14;365:l1849. doi: 10.1136/bmj.l1849.
Chronic use of tramadol after acute pain episode: cohort study.

米国の研究です。
急性の疼痛にトラマドールを用いると、その他の短時間作用型Opioidと
日本とは使用されるシチュエーション、オピオイドの種類が異なるなど、事情が若干異なるので、この研究によって、一概に日本におけるトラマドールの処方がOpioid長期処方に繋がるかどうかは分かりません。
しかし近年、急性疼痛に対してトラマドールの使用機会が急激に増えてきているので、処方時は注意が必要です。
 
■術後のOpioid退院処方
(70%の人に退院時Opioidが処方されているという米国の現状・・・)
 
 
 
■急性疼痛に(特に術後)トラマドールを使用すると一定確率でOpoiod長期処方(+依存)に繋がる・・・
 

うつ状態へは食事療法も有用!

Psychosomatic Medicine. 81(3):265–280, APR 2019


The Effects of Dietary Improvement on Symptoms of Depression and Anxiety: A Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials
Joseph Firth;Wolfgang Marx;Sarah Dash;Rebekah Carney;Scott Teasdale;Marco Solmi;Brendon Stubbs;Felipe Schuch;André Carvalho;Felice Jacka;Jerome Sarris;

 

肝の表!

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うつ状態に対して食事療法が有用!

 

アブストラクトのまとめ

<背景>
貧しい食事はメンタルヘルスに悪い影響を及ぼす。しかしながらうつや精神状態に関しての食事療法の効果は十分に評価されてこなかった。我われはシステマティックレビューとメタアナリシスを通じてうつ状態や不安への食事療法の効果について検討した。
<方法>
2018年3月までの臨床的および非臨床的な集団におけるうつ病の症状および/または不安の変化を報告する食事療法介入のすべてのランダム化比較試験について、主要な電子データベースを検索した。コントロール群と比較した食事療法を効果サイズを決定するために、ランダム効果メタアナリシスを行った。サブグループとメタ回帰分析を使用して、不均質性の潜在的な原因を調査した。
<結果>
参加者45,826人の結果データを含む16の適格なランダム化比較試験を調べた。その大部分は非臨床的にうつ病ではなかったが(n=15)、食事介入は抑うつ症状を有意に減少させた(g = 0.275、95%CI = 0.10〜0.45 、p = 0.002)。不安に対する食事介入の影響は観察されなかった(k = 11、n = 2270、g = 0.100、95%CI = -0.04〜0.24、p = .148)。女性サンプルを用いた研究では、うつ病と不安症の両方の症状に対して、食事療法の介入による有意に大きな利益が観察された。
<結論>
食事介入は、うつ病の症状を軽減する新しい介入として期待されている。今後の研究として、精神衛生を改善する食事介入の特定の構成要素を決定し、基礎となるメカニズムを探究し、これらの介入を臨床および公衆衛生環境において提供するための効果的なスキームを確立することが求められる。

 

感想)

うつに対して運動療法の有用性を示した論文は多々あるが、食事療法の有用性に監視しては議論があり、この論文はその点で意義深い。食事療法の内容は各々の研究で異なる可能性もあり、具体的にどのような食事が精神衛生的に良いのか、さらに詳細な検討が必要である。男性より女性のほうが食事療法の効果が高いのはなぜなのだろう?

 

 

がん患者に精神心理的サポートを上手に案内するには?

 

Tondorf T, Grossert A, Rothschild SI, Koller MT, Rochlitz C, Kiss A,Schaefert R, Meinlschmidt G, Hunziker S, Zwahlen D.
Focusing on cancer patients' intentions to use psychooncological support: A longitudinal, mixed-methods study.
Psychooncology. 2018 Jun;27(6):1656-1663. 
 
アブストラクトのまとめ
【背景】
がん患者の気持ちのつらさに対する精神心理的サポートは適切に行われるべきであるが、実際には患者自身がその介入を希望しないことも多い。したがって我われは患者の心理社会的なニーズを理解する必要がある。
【方法】
がんの外来診療での前向き観察研究。苦痛および、精神心理的サポートを受ける意思があるかどうか、サイコオンコロジー外来を受信するかどうかを、「気持ちのつらさの寒暖計」を用いた半構造化面接とカルテ記録を用いて行った。解析には混合研究法アプローチを用いた。
【結果】
333人の患者(気持ちのつらさの尺度≥5)のうち、25%がサイコオンコロジー外来の受診を希望していた。33%が「どちらでもない」と回答し、および42%が「希望しない」と回答した 。結果、23%が4ヵ月後にサイコオンコロジー外来を受診した。「どちらでもない」の患者は「希望しない」の患者より高い苦痛を報告した(オッズ比= 1.18、95%信頼区間[1.06-1.32])が、「希望する」患者に比較してサイコオンコロジー外来の受診率は低かった(オッズ比= 14.04、95%信頼区間[6.74-])。 29.24])。定性分析では、「どちらでもない」の患者は恐怖と不確実性を強調していたが、「希望する」もしくは「希望しない」といった明確な意図を持った患者は知識、態度、対処の概念を強調していた。
【結論】
気持ちのつらさ値が高いが、受診に至らない「どちらもない」群を特定した。気持ちのつらさのスクリーニングプログラムを最適化するために、我々は日常の臨床診療において、患者と支持療法の必要性を検討する必要がある。
 
感想)
日本ではがん患者に対する苦痛のスクリーニング手法が様々用いられているが、気持ちのつらさに関しては気持ちとつらさの寒暖計を用いることが多い。(がんに関わる医療者が必須で国が推し進めている緩和ケア研修会PEACEでも提示されている)実際にはこれでスクリーニングを行い、介入が必要と判断されても、受診に躊躇される方は少なくない。今回の研究ではやはり医療者側からも注意を喚起していく必要性を示している。
またこの論文では解析手法に混合研究法が用いられている。量的指標で捕らえきれない部分を補う手法として今後ますますこの手法が用いられる機会が増えると思う。

高齢者の慢性疼痛には心理的介入が有効!

久々の更新…

高齢成人の慢性疼痛に対する心理的介入の効果(システマティックレビュー) 


JAMA Intern Med. 2018 Jun 1;178(6):830-839. doi: 10.1001/jamainternmed.2018.0756.
Association Between Psychological Interventions and Chronic Pain Outcomes in Older Adults: A Systematic Review and Meta-analysis.
 

ポイントの図!

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疼痛強度は心理的介入で軽減する!


アブストラクトのまとめ>

【重要性】
慢性の非癌性疼痛(以下、慢性疼痛と呼ぶ)は高齢者によく見られ、薬物療法を中心に管理されていることが多い。心理療法も推奨されていますが、高齢者における有効性に関する情報はほとんどない。

【目的】
慢性疼痛を有する高齢者における心理的介入の有効性、および治療効果が参加者、介入、および研究の特徴によって異なるかどうかを判断すること。

 
【データソース】
 MEDLINE、EMBASE、PSYCINFO、およびCOCHRANE LIBRARYは、研究開始から2017年3月29日まで検索された。
 
【研究選択】
 分析には、
(1)無作為化試験デザインを使用した
(2)認知行動療法単独で、または他と組み合わせて使用​​した心理的介入を評価
(3)慢性疼痛(≧3ヶ月)の患者をサンプルとして登録した研究平均年齢60歳以上
(4)介入前および介入後の定量的データ。
 
【データの抽出と合成】
 2人の著者が独自にデータを抽出した。混合モデルメタアナリシスは、治療結果が転帰に及ぼす影響を検証しました。参加者(例:年齢)、介入(例:治療モードの実施)、および研究結果(例:方法論的な質)の特徴間の関連を調べるために分析が行われた。
 
【主な成果と対策】
主要評価項目:痛みの強度
副次評価項目:疼痛干渉、抑うつ症状、不安、致命的な信念、疼痛管理のための自己効力感、身体機能、および健康状態

【結果】
2608人の参加者(うち1799人(69.0%)が女性)を対象とした22件の研究を分析した。参加者の平均年齢は71.9(標準偏差7.1)歳。治療後の標準化平均差(dD)の差は、疼痛強度(dD = -0.181、P = 0.006)であった。副次評価項目では、疼痛干渉(dD = -0.133、P =0.12)、鬱症状(dD = -0.128、P =0.14)、不安(dD = -0.205、P = 0.09)、破滅的信念(dD = -0.184、P = 0.046)、自己効力感(dD = 0.193、P = 0.02)、身体機能(dD = 0.006 、P =0.96)、および健康状態(dD =0.160、P=0.24)。疼痛についてのみ治療後評価を超えて効果が持続していた(d D = -0.251、P = 0.002)。モデレータ分析では、治療の形態(集団 対 個人)のみが集団群の治療を支持する一貫した効果を示した。

【結論と関連性】
高齢者における慢性疼痛の治療のための心理的介入は、疼痛の軽減および信念の破滅および疼痛管理のための疼痛の自己効力の改善を含む、小さな利点を有した。これらの結果は、集団的な介入を使用した場合に最も有用であった。慢性疼痛を有する高齢者における心理学的アプローチの有効性および治療効果の持続可能性を高める戦略を開発および試験するための研究が必要である。
 

感想)
慢性疼痛には集学的な介入を要することが多い。一般にかかりつけ医や整形外科など、医療機関を転々として心療内科にたどり着く患者さんも少なくない。とりわけ、破滅的思考パターンは疼痛の難治化を引き起こしやすい。今回の研究ではそれらに対して心理的介入の有効性を示している。また身体機能や健康状態はほぼ変わらない一方で、自己効力間に関しては介入前後で有意差がついているのは興味深い。
今回のレビューは高齢者に限定した慢性疼痛であり、年齢層によって心理的介入の効果に違いがあるのかは今後の研究に期待したい。